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ドンドンドドドンどんどん行くばい!
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15days終了
15days終わりました゜+。:.゜ヽ(*´∀`)ノ゜.:。+゜
読んでくださった方、メッセージ下さった方、本当にありがとうございました。お疲れ様でした。
2週間と少しの間、分かってはいましたが毎日大変で、けれどとても楽しかったです・・・!書いていると、さながら四天っ子と学生生活送っているような気分になれました。相変わらず幸せそうな人間で何よりです。

自分がサイトを持っているうちに一度くらい、四天宝寺の学校ショットが出れば一度はやってみたかった一日一話の学校生活企画でしたので、完遂できて自己満足の極みです。
大雑把なネタ以外ほぼぶっつけで書いていたので、荒っぽく読みにくい所が多くて本当に申し訳ないです。いつも時刻が日付変更ギリギリだったり若干アウトだったり、全く以って準備や余裕という言葉を知りません・・・。

個人的に気に入ってるのは4日目6日目10日目です。6日目は特に書いていてとても楽しかった記憶があります。
リベンジしたいのは何と言っても小春ちゃんです。小春ちゃんは本当に難しいですね・・・!(´;ω;`)愛は溢れるほどあるのに・・・!ギリギリ 財前くんもリベンジしたいです。

週末のうちに編集してシエスタにあげようと思います。お付き合いありがとうございました!
15days | 18:03 | comments(0) | - | chica
15th day
梅雨の中日だ。初夏らしい気候に早くも辟易しながらも、時折窓から吹く風が心地いい。
5時間目の体育が祟って、4組を怠惰な眠気が襲っていた。
紫乃の席からもぽつりぽつりとクラスメイト達が沈没してゆく様が見える。
体育の次の6時間目は地理の授業で、目の前の黒板には大判の世界地図が張られている。
つとめて起きようと努力していた紫乃もやがてうつらうつらと夢路へ船を漕ぎかけた時、待ちくたびれた6限終了を告げる鐘が鳴った。

「よっしゃーーーーーーっ!テニスやーーーーーーっ!!!」

紫乃の目の前の席でガタンと盛大な音を立てて椅子がひっくり返った。大分慣れた光景ではあるけれど、未だに紫乃は驚いて肩を跳ね上げてしまう。
立ち上がった勢いで椅子をひっくり返した本人の遠山金太郎は、つい5秒前までさっきまでその筋肉質の腕を組んでうつ伏せになって眠りこけていたはずなのに、寝起きでよくこれほど大きな声が出せるものだ。
金太郎は座っていた椅子を跳ね飛ばし、おもむろに鞄とテニスバッグを掴んで、今にもコートへ駆け出さんばかりの勢いで先生に詰め寄る。

「ちょお待ちいや遠山!まだ先生の話終わってへんで!」
「ええーっ!まだやっとったん?センセー話長いわあ。ワイ、早うコート行きたいー!」
「あかん!頼むからたまには先生の言うことも聞きや!」
「嫌や!行きたい!」
「授業終わるまではあかんわ!ついでに終礼も終わってからや!」
「嫌やー!もうチャイム鳴ったやんか!仕舞いや仕舞い!」

ギャアギャアと教壇と座席で言い合いを始める。クラスメイトはいつものことと、各々勉強道具を仕舞いだして帰り支度を始めだした。
地理の先生がすごすごと教室から退散した後で、金太郎はもう、自前のテニスバッグからラケットとボールを取り出して楽しそうにしている。
今ここでテニスを始められても、困るのだけれど。
紫乃が困惑気味に金太郎に視線を注いでいると、ばちっと視線がかち合ってしまった。思わず怯んでしまう。目の前の金太郎の瞳は大きくて、引き込まれそうなほど強い光を宿している。

「何や?」
「う、ううん!何でも・・・!」
「何や?ラケット気になるん?もしかして、三島もテニスするん?」
「いや、違・・・!」
「せやったらワイと勝負してみいひん!?」
「い、いい・・・!」

金太郎はぴょんと空いた椅子に飛び乗り、手にしたラケットとボールを紫乃に向かって構えてみせる。
たとえ勝負したとしても、遠山くんはとてもテニスが強いと聞いたことがあるから、確実に紫乃が負けるに決まっている。
一生懸命断りの言葉を探していると、不意に教室の後ろドアから金太郎に声が掛かった。

「「金太郎さーん!」」
「あー!小春とユウジや!どないしたん!」
「嫌やなあ、迎えに来たんやで?」
「せや、部活行くやろ!」
「おお!」

金太郎と紫乃が振り返ると、3年生の先輩だ。確か、金色先輩と一氏先輩と言う、面白いと評判の二人組の有名人。
その後ろにいるのは、白石先輩だろう。左腕一本で、先生でも太刀打ちできない紫乃の級友を黙らせることの出来る唯一の人だと聞いたことがある。

「金ちゃん、また何かやらかしてないやろな?」
「何や白石、ワイ何もやってへんで!」
「あーそうかそうか。せやけどさっき、金太郎が椅子に乗ってるのが見えたんやけどな?俺の錯覚やったかな?」
「やややってへん!やってへんけどもうやらんから堪忍してえな!」
「さよか?せやったら今日はオマケしとこかな」
「やった!」
「おーい白石!金太郎!行くでー!」
「おー」
「ほな三島!また明日な!」
「うん、ばいばい」

大きく手を振る金太郎に紫乃も小さく手を振って返す。
ぴょんぴょんと跳ねるようにしながら大きい先輩達の後を着いてゆく金太郎の後姿を見送りながら、紫乃は「また明日」と小さく呟いた。
15days | 23:55 | comments(0) | - | chica
14th day
雨の朝は湿っぽくて薄暗い。陰鬱な気分で登校した紫乃は湿っぽい昇降口で、本日3度目の溜息を吐いた。全く以て梅雨の下駄箱は地獄だ。
それでなくても紫乃にも授業中の暇をつぶすほどの悩み事は沢山ある。頻繁に実施されるテストやら、友人関係やら、部活やら。おまけに天候は心を支配する。雨は本当に気が重い。
そんなことを訥々と考えていた紫乃は、自分の教室にぽっかりと空いた空洞に気付かずに、入りざまに机に躓いた。

「わ、わ、うわっ!」
「・・・む」

反射的にそばに寄せてあった机を片腕で掴んで全体重を支える。何とか転ばずには済んだ。
教室に空洞が出来ていたとは。誰がやったのだろう、戻すの大変なのにと考えて空洞を覗くと、その空洞の中に、坊主が胡坐をかいて座っていた。
クラスメイトの石田銀だ。彼の周りには紙のようなものが広げられて空洞を埋めている。
それは転倒を踏みとどまった紫乃の足元近くまで伸びていた。幸い踏んでいないようだ。そっと床に足を下ろして、ほっと胸を撫で下ろした。
踏みとどまった妙な体勢のまま、紫乃は朝の挨拶をする。

「あ、おはよう・・・」
「おはよう」
「それ、何・・・?」
「般若心経や」
「って、あの?お坊さんが読むアレ?」
「ああ」
「石田くん、読めるの?」

驚きに満ちた紫乃の言葉に銀は静かに頷く。蛇腹に畳める折り本だ。明らかに現代図書ではなさそうだと思ったが、少し覗きこんでみると案の定漢字が羅列されていて、紫乃には少しも分からない。
読経が彼の趣味なのだろうか。中学生にしてはとても渋い。

「放課後は見回りの先生に気味悪がられたので、普段は朝に読んどるんやが・・・」
「え、読んでたの?・・・ごめん、私邪魔だったら図書室とか行くよ」
「・・・いや、ええ。もうすぐ登校時間やしな」

伸びきっている折り本を手早くぱたぱたと畳んでゆく。両足の足場を確保した紫乃は銀を手伝って机を元の位置に戻す。

「驚かんかったんは三島はんが初めてやで」
「えっ驚いたよ、これでも・・・気付かなかっただけだけど・・・」
「せやから入って来れたんやな。無心は強いわ」
「ええ、無心ってそういうことなの?」
「冗談や」
「冗談・・・」

「石田くんが冗談を言うなんて」と笑ってみたが、細い目で一瞥されるだけで静寂が戻ってくる。
気まずい。虚しくなってきたと沈黙に耐えられない紫乃の背中を汗が伝う。

「何か悩みでもあるんか」
「え?うーん。あるかないかと言われれば、特にないんだけど・・・」
「さよか。何かあったら相談してくれたらええ」
「え」
「つまらん悩みでも言葉にすると気が楽になることもあるで」
「うん。ありがとう」

相変わらず今日も梅雨らしく一日雨だ。登校して来た時に比べて心なしか雨脚が強くなっている気がする。
けれど少しだけ気分は晴れそうだ。何事も気持ち次第だと思い直して、紫乃は拳を握った。
15days | 23:44 | comments(0) | - | chica
13th day
じりじりと遠い山の稜線で燃えている太陽が南向きの窓に差し込んで、茶色い教室を真っ赤に染め上げていた。
教室は不思議な場所だと紫乃は目の前のがらんとした教室を眺めて思う。
昼間は生徒達であんなに騒がしいのに、終礼が終わって生徒が帰宅してしまえば空っぽの静けさだけが戻って来る。その繰り返しだ。
本当に学校は不思議な所だ。年頃としては学校に通うのは当然のことなのに、どうして自分が学校に通っているのだろうと紫乃は時折不思議に思ったりさえする。

ああでも、そんなことよりも、今は。

「紫乃ー」
「・・・」
「できたかー」
「・・・っ」
「分かったかー」
「・・・っ!」
「おーい、紫乃「うるっさい!まだ分かんない!」

紫乃の拳の下敷きになっているのは数学の補習プリントだ。拳と一緒に握ったせいで皺になってしまっている。
一日の終業後、さあ帰ろうと意気込んだ紫乃は、かねてからの数学の成績不振を見かねた教師に捕まった。プリント3枚、今日中に終わらせろと呼び出されて押し付けられてしまったのだ。

「まだかいな。ホンマ、トロい奴やなー」
「うるさい!だって全然分からないんだもん・・・!」

隣からのん気な声を掛けて来るのは級友の忍足謙也だ。今日は部活がない日にも関わらず、放課後はコートでテニスをして来たらしい。
汗をかいて教室に帰ってきた謙也に数学を教えてほしいと紫乃が頼み込むと、謙也は仕方がなさそうに、けれど紫乃の隣席に腰を落ち着けてくれた。
手持ち無沙汰なのか、自分のペンケースからシャーペンを取り出すと無意識に回し始める。

「しっかし自分、ホンマ要領悪いねんなあ。適当にやっとけばこない残らんで済んだんに」
「だって数学、宿題すらやりたくない位嫌いなんだもん・・・」
「それくらいやったれや」

手持ち無沙汰に回していたペンを止めて、謙也は呆れたように笑う。
紫乃から見た謙也は案外、何でも出来る。案外と言っては失礼だけれど何事にも要領がいいのだ。ちょっとコツを掴むと何でもやってのけて見せる。
アホっぷく見せかけて、軽やかに何でも出来てしまう人なのだ。たまに憎らしく感じるくらいに。

「せやけどまあ、あの先生の話聞いてるだけでも全然分からんっちゅうことはないやろ」
「分からないのそれが!もう授業中先生が何喋ってるのか分からないくらいに!」
「・・・それはマズいやろ・・・」
「あー!むかつく!謙也のくせに何よ!授業中オモシロ消しゴムばっかり使ってるくせに!」
「俺のくせにって何や!って言うか消しゴムはめっちゃ奥深いねんで!?そんなこと言うんやったらもう紫乃には教えたらん!」
「あああ嘘!ごめん謙也!」

静かな教室に二人の喧騒だけが物寂しく響く。
言い合いのわずかな間に夕暮れの教室の哀愁が滲んで来て、紫乃は思わずはっとした。
謙也も同じように感じたらしく、教室の壁掛け時計と紫乃の手元のプリントを見比べた。

「ホンマにうかうかしとると下校時刻なってまうわ」
「うっ・・・」
「下校までもう1時間ないで。プリントはどれくらい残っとるん」
「・・・2枚・・・」
「はあ!?さっきまでの放課後2時間何やっとったん!」
「全然進まなかったんだもん・・・!謙也お願い!」
「・・・しゃあない、さっさとやってとっとと帰るで」
「やった!ありがとう謙也大好き!」
「全部出来たらたこ焼き付けたる」
「本当に!?やった!私頑張る!」
「おー、分かったらさっさと終わらせるで」
「はーい!」

夕日に照らされて落とされた影は真っ黒で濃い。東から透明な闇が迫っているのが見えた。
15days | 23:59 | comments(0) | - | chica
12th day
すべての音が篭って聞こえるような霧雨の午後。教室の電灯が漏れ出て、廊下のほの暗い世界を優しく灯している。
そんな時間の流れさえ遅く思われるほどゆるやかな昼休みを、突然怒号がつんざいた。

「何言ってんねん三島!小春は俺の嫁やで!」
「はあ!?ユウジこそ何言っとんねん日本じゃ同性婚は認められてへんわアホ!小春ちゃんと結婚するのはこの私や!」

廊下にいた生徒の肩すら震わせる大声に、教室にいた8組の面々も驚いて視線をユウジと紫乃に向ける。けれどすぐに「また始まった」という顔をして各々の作業に戻った。
8組に所属する生徒が日に一度は必ず聞くのは、決まってこの騒ぎだった。同じく8組のクラスメイトである金色小春に関する「どちらがより小春が好きか」合戦。
今年の4月に中学校生活最後のクラス替えがあってからというもの、一氏ユウジと三島紫乃が同じクラスになってからと言うもの、この口論は8組でほぼ毎日繰り広げられている。

片や小春といつも一緒にいて常にラブコールを送り続ける男の子。
片や小春親衛隊隊長を名乗って憚らない女の子。

クラス数が多いのが幸いして2年まで接触の殆どなかった二人が、遂に3年の今年同じクラスになってしまった。しかも、小春までもが。
そうなれば小春を間に挟んで衝突するのは必然で、毎日顔を付き合わせればユウジと紫乃は必ずそんな喧嘩を始めていた。
そんな二人の衝突を最初ははらはらしながらも拳を突き上げていた8組の面子も、雨の季節になれば見慣れた光景として落ち着いたらしく最近では真面目一辺倒の委員長すら仲裁に入ってこない。

「三島が知るずっと前から小春は俺のモンなんやで!?今更横恋慕して来んなや!」
「はあー!何よそれ、私だってユウジが小春ちゃんを知る前から知ってるんだからね!」
「は!?いつからや、言ってみい!」
「1年の秋ですぅー」
「残念やったな!俺は1年の夏や、夏!」
「変わらないじゃない3ヶ月しか!」
「短い中学校生活のたった3ヶ月間がどれだけ貴重な時間か分かってるんか!?」
「ユウジからそんな大層なお言葉がいただけるなんて思っとらんかったわ。ホンマ有難いわー」
「つくづくむかつく奴やなあ・・・!せやったらこれならどや!見よこの可愛い可愛い小春の写真の数々を!」

得意げに小春のテニス写真をばっと机に並べる。すかさず写真に食いついた紫乃を見て、ユウジは自慢げに手作りの小春の写真の入ったうちわで自分を仰いだ。

「なっ・・・!何よこれ・・・ちょっと欲しいじゃない・・・!いくら!」
「売ることは出来ませーん。プライスレスや」
「うわぁむかつく・・・!ああでも小春ちゃん本当に可愛い・・・!」
「せやろー?さすがは俺の小春やで!」
「うるっさいわ、ユウジになんか聞いてない!って言うかユウジの小春ちゃんじゃないから!私のだから!」
「何やと!?やるんか!」
「ユウジがやれるもんならね!」
「ほらほらユウくん、紫乃ちゃん」
「「何!?」」
「そろそろ黙りましょか」
「「・・・ごめんなさい」」

小春の一言でユウジと紫乃は急にしおらしくなって小春に頭を下げた。小春の机の前に二人、まるで職員室で叱られる生徒のように並んで肩を丸める。

「騒ぐと回りに迷惑掛かるんは分かるよな?」
「・・・はい」
「あんまり騒ぎすぎるとワイも困っちゃうの分かるな?」
「・・・はい」
「分かったら撤収!」
「「・・・はーい・・・」」

二人は背を丸めてすごすごと大人しく引き下がると、机に散乱する写真の後片づけをし始めた。それでも写真を仕舞おうとするユウジを紫乃が引き止めては写真を取り合う。

「でもやっぱこれ頂戴!」
「あかん言うとるやろアホ!」
「いいじゃん一枚くらい!」
「あーかーんー」
「ケチー!」
「・・・何だかんだってあの二人、仲良えんよなあ」

小春が頬杖を付いて二人の姿を眺めながらぽつりと呟いた。
そうか?というクラスメイト達の疑問の視線を浴びながら、小春はニヤニヤ笑う。
今日も8組の平穏は金色小春の掌の上にある。
15days | 21:24 | comments(0) | - | chica
11th day
昼休みの内に普段使っている小道具の手入れをすると言いだした小春は、ごそごそと自分の机の脇に掛けてある大きな袋を机の上に置いた。
紫乃は紫乃で、その様子を椅子の逆向きに座って眺めながら、昼食後の優雅な昼休みのひと時を過ごしていた。
鞄の中をのぞかせてもらったが、小春くんの持ち物はどれも可愛いと紫乃は思わず感心してしまう。小道具以外は。
机の上にずらずらと並べられてゆくカツラを見て紫乃はぼんやりと感想を述べる。

「いつ見てもすごいヅラだね・・・」
「ウフフ三島ちゃんったらお目が高いのね、この丁髷カツラはワイのお気に入りなんやで?なんならちょっと被ってみる?」
「い、いえ・・・いいです・・・」
「ホラホラ!そんな遠慮せずにっ!」
「ギャー!」

机越しに小春に肩を掴まれて、紫乃は身動きできない。やばい。このオネエキャラも男の子なんだなあとこういう時に紫乃はたまに思う。思った時には遅い。
今まで小春の手により数多のコスプレの経験を持つ紫乃だが、丁髷だけは被ったことはない。今後の人生でも被る事はないと願いたい。被りたくない。
今しがた教室に帰ってきたユウジがバタバタと物騒な音を立てて走り寄ってきた。駆け寄ると同時に乱暴に小春から紫乃を引っぺがす。椅子から吹っ飛ばされて紫乃は尻もちをついた。

「小春!無事か!?」
「あらやだユウくんったら、もう帰って来たの?」
「・・・ていうかどこをどう見たら小春ちゃんがピンチに見えるのよユウジのアホ!」
「ん?・・・ホンマや・・・!俺のおらんトコで何やっとんねん小春!浮気かしばくど!」
「浮気なんかしてへんがな」
「いたた・・・ユウジって本当に小春ちゃん第一なんだね・・・」
「当ったり前や!小春おるトコに俺あり!小春のおるトコが俺の居場所やで!」

せやからさっきの立場俺と代われと胸を張って大声で言うユウジを、小春はふっと冷たく一瞥する。

「ユウくん、女の子をむやみに突き飛ばしたりしたらあかんで」
「え?」
「さっき突き飛ばして三島ちゃんに尻もちつかせたやん。な?三島ちゃん」
「え?・・・あ・・・そういえば・・・」
「ちゃんと謝った方がええで」
「うっ・・・スマン・・・」
「・・・小春ちゃんって、たまに本当に男前だよね・・・」
「そう?ア・リ・ガ・ト(はぁと)」

語尾にハートマークを散らしてアイドルのように華麗なターンして紫乃を振り返る。

「せやったら!男前なワイとロマンスしてみいひん!?三島ちゃん!」
「ギャアアアア!いい!いい!遠慮しとく!」
「あっ!何やってんねん小春うううううう!」

小春の一挙一動に紫乃の悲鳴とユウジの怒号が響く。8組は今日も平和だ。
15days | 23:54 | comments(0) | - | chica
10th day
梅雨の晴れ間で、今日は朝から天気が良い。朝の空気が好きだ。南向きに作られた教室の窓から東から朝日が差し込んで、窓を開けると冷たく澄んだ空気が入ってくる。
まだ覚醒しきらない紫乃のテンションは限りなく低い。それでも、紫乃はその時間が好きだった。
いつものようにガラッと自分の教室の引き戸を乱暴に開けて、窓辺の先客に気が付いた。夢の続きでも見ているのかと思った。
先客は紫乃に気付いて、すっきりと通る声で挨拶した。

「おはよう」
「おは・・・よう・・・?」
「何ね?」
「・・・珍しいね、千歳くんが朝から教室にいるなんて」
「そう?」
「うん。とても珍しいね」
「何ね、そんな他人行儀で」

九州から転校してきたばかりの自由人は紫乃の言葉にからからと笑う。
先客こと千歳千里というクラスメイトは、四天宝寺に転校してきた日からとにかく何に関しても良く言えば自由、悪く言えばルーズなのだ。
転校初日にも朝から来なかった。定期テストの日にさえ余裕で遅れてくる。
だから彼が朝から学校に来た日は「奇跡」と呼ばれるほどだった。
その千歳が朝日を背景に陽だまりのようにニコニコ笑っている。紫乃にとって珍しいどころの光景ではない。
千歳はふと声を顰めて、内緒話をするように囁く。

「実はな」
「実は?」
「夕べ寝過ぎたったい」
「それだけ?」
「他に理由が欲しい?」
「あるならば」

紫乃は千歳の立つ窓際に近い級友の椅子に座る。朝の白い光が目に痛い。
我ながら性格の悪い返し方だと思う。けれど、紫乃にとって朝とは機嫌が悪いものなのだ。
千歳は紫乃の棘を知らぬふりをしてか、相変わらず微笑んでいる。

「三島さんの顔が見たかった」
「は?」

何を言い出すんだこの人は。千歳の思わぬ言葉に流石に紫乃の頭も冴えてきた。

「嘘」
「本当」
「嘘」
「本当」

「冗談よね」
「本気ばい」

本気と言う割にはひたすら訝しむ紫乃をからかうような、楽しそうな笑みを浮かべっぱなしで千歳はそう言い放つ。

「三島さんがいつも早く来てるの、知っとるし」
「何で?千歳くん、いつも遅刻して来るのに」
「学校が教室だけやと思ったら大間違いばい」
「何それ。教室、来ればいいのに・・・」
「朝から夕方まで教室だけに閉じこもっているんはもったいないばい。この学校は広か。面白いモンもいっぱいあっとよ」

眉根を下げて、残念そうにそう言う。
寝ぼけた頭で彼の言葉を聞いていると、それも正しいように思えてくるから不思議だ。騙されている気がする。と、いうか騙されている。

「面白いって、例えば?」
「この前、カマキリの卵見つけた」
「嘘」
「うん、嘘」

カマキリの卵は冬やからね、と紫乃が大真面目に言うと「三島さんは物知りやねえ」と感心したように千歳に大きい手で拍手する。
気持ち良さそうに伸びをする。

「と言うわけで、じゃあ俺は今日も自主課外授業してくっかねぇ」
「えっ今日もサボるの?」
「うん。三島さんも来る?面白かよ。三島さんがいればもっと楽しいと思うばい」
「・・・別に、朝だけならいいけど」

千歳はやった、と子供のように笑っていたって自然に紫乃の手を取って歩き出す。その嬉しそうな笑顔を見ていると、紫乃も一日位学校をサボっても構わないような気持ちになってしまうから不思議だ。
その手が紫乃を新しい世界に連れ出してゆく。二人の後にした教室の窓から帯のように光が降り注いでいた。
15days | 23:51 | comments(0) | - | chica
9th day
6月に入ると、急に空気が湿っぽくなってきた。紫陽花が花弁の端から僅かに色づき始めている。
中途半端に暖かいのに雨が降ると冷える、湿っぽくて動くだけでも汗がにじむ嫌な季節だ。梅雨が来るのだ。

それでも、昼休みに入ってから少しすると、朝から弱かった雨が止んで、雲が薄くなり始めた。
一日雨と予報された重たい雲の切れ間が、たまたま今日は昼休みに巡ってきたのだ。
雨が続くと太陽が恋しくなる。クラスメイトと同じように、紫乃もそのわずかな太陽の恩恵を教室の窓際で受けていた。

湿気の所為か籠ったような昼休みの教室の中で、白石が誰かの机に腰掛けてぼんやりと窓の外を見ているのが目に留まった。
握っているものは何だろう、握力を鍛えるような健康器具なのだろうか。確か彼はそういうものが好きだと言っていたかも知れない。
相変わらず綺麗な顔立ちだ。男の子なのに、ちゃんと整っている。美形とは、見ているだけで引き込まれそうな顔の事を言うのだと紫乃は白石を見るたび思う。
紫乃がぼんやりと眺めていると、無表情で健康器具を手持無沙汰に握っていた白石が不意にふっと糸を緩めたように笑うので、紫乃はどきっとした。

「何見てるの?」
「んー、アレ」

大きい声で少し離れた白石に話しかけてみると、包帯を巻いた左手で手招きされた。近寄ってみると、白い左手が今度は窓の外を指差す。
白石が苦笑いで指差した先には数人の影があった。全力疾走で校庭を突っ切って行くのが見える。
先頭を走るのは確か、よく昼休みになると教室に「遊ぼうやー!」とやってくる赤い髪の1年生だ。
その隣を同じクラスの忍足くんが張り合うようなスピードで走っている。
少し遅れて、彼らの後ろをかったるそうに付いてゆく黒髪の男の子や、大柄な坊主の姿も見えた。

「元気だね」
「ホンマや」
「どこ行くのかな」
「コートやろな」
「よっぽど好きなんやね、テニス」
「せやなあ・・・。あいつら、他に時間の使い方知らんからな」

彼らは校庭を突っ切ってコートに向かって行った。雨で柔らくなった校庭には、彼らの新しい足跡がぽつぽつと残っている。
白石は彼らの姿を見て、穏やな笑みを浮かべている。

「白石くんは行かないの?」
「せやなあ、俺は遠慮しとくかな」
「何で?」
「昼休みっちゅうんは、休む為のモンやで」
「ふふ、おじさんくさい」

思わぬ発言に紫乃はつい笑ってしまう。笑ったのが少し気に障ったのか、白石に軽く睨まれた。

「一緒に行けばいいのに」
「よく遊ぼう言うてるけどな。あいつら加減知らんのや。帰ってきたらもうぐったりやで」
「確かに、そうかも」
「ただでさえ今日は体育館で朝練やったんに、やっぱボール打ちたいんやろうな」
「そうなんだ」
「それしか考えられへん連中やからな。せやから昼休みくらいのんびりしとる位が丁度ええんや」
「ふうん」

灰色い雲が徐々に白くなって、いよいよ太陽が顔を出した。その周りには久しく見ていない青い空も僅かに見える。
白石が眩しそうに片目を瞑って太陽を見上げる。

「この分なら、今日は部活出来そうやな」
「よかったね」
「ああ」

紫乃の言葉に嬉しそうに笑う。さっきの退屈そうな様子とは裏腹の白石に、この人も彼らと同じなんだなあと、紫乃は言葉には出さないけれど思った。
15days | 23:59 | comments(0) | - | chica
8th day
「テニスがしたい」
「・・・」
「テーニースーがーしーたーいーーー!」

金太郎が手にするソプラノリコーダーに肺いっぱいに吸い込んだ息を吹き込んだ。ピポーとソプラノの甲高い乱暴な音が鳴る。

「・・・遠山くん、うるさい」

紫乃はアルトリコーダーを口元から外して溜息をついた。
今日の5時間目の音楽は2人一組のリコーダーのテストだ。リコーダーなんて中学生にもなって使う楽器かと疑いたくもなるが、テストがあるのだから仕方がない。
紫乃が組むことになったのは遠山金太郎という男子だ。たまたま隣の席に座っていただけなのだが、彼とは最早犬との方がコミュニケーションが取れるのではないかと思うほどに意思の疎通が難しかた。
何にせよ、人の話は基本的に聞かないわ、面白いところにすぐすっ飛んで行くわ、落ち着いてまともに話が出来た試しがない気がする。
その彼の奔放さは3年生でも手を焼くほどだというのだから、今回紫乃が彼と組むことになったのは不幸としか言いようがなかった。
昼休みは残り20分。それまでに何とかして金太郎を説得して一緒に練習しなくらはならない。

「授業終わったら好きなだけ出来るんやからええやない!」
「せやかて日が沈んでもうたらそれで終わりや!」
「あっ・・・うん・・・それは、そうだね・・・」
「せやろ!?」
「でも昼間は授業があるの!しかも今日テストなの!」

金太郎の大声に負けないくらい紫乃も声を張り上げる。張り上げなけれなばらないほど紫乃は焦りつつあった。

「出来なかったら追試だよ!そうするとテニスする時間も減っちゃうよ?いいの?」
「ええーっ!?あかん!それはあかんわ!」

むっつりと不貞腐れていた金太郎の表情が、紫乃の言葉を聞いて急に困ったようなものに変わる。

「でしょ?」
「あかん!ワイ、テニスはしたいわ!こんなんに時間取られるの嫌やわ!」
「でしょ?私も時間取られるんは嫌や」
「ワイが出来んと三島も困るんか?」
「そう。揃って追試だから」
「オカンが人に迷惑かけたらあかんって言っとったわ!分かった!三島のためにワイはやる!」
「よし!よく言った!」
「で、この記号って何て読むん?」
「・・・!」

昼休みは残り15分。
放課後の追試は、どうやら避けられないようだ。
15days | 23:59 | comments(0) | - | chica
7th day
昼食後の掃除の時間。
どうして昼食の後、至福の時間の後にこんな埃っぽいことをしなければならないのか、学校生活というものは甚だ不思議なものだ。
大きい教室の窓から差し込む日差しが掃除で舞い上がる埃を輝かせる。ちっとも綺麗でも何でもないと、紫乃は嘆息する。
教室には他の掃除当番4、5人がいるだけだ。

「かったるい・・・」

紫乃と共に椅子を上げた椅子の脚の埃を拭く役目を言い付かっていた財前がぼそりとそう呟いた。
その割りにはちっともやる気がないらしく、手にしている雑巾も1つ2つ拭いたような黒い跡があるだけで綺麗なものだ。
すっかり半目で、顔から、表情から、全身からかったるそうな、今にも眠ってしまいそうな雰囲気がかもし出されている。
紫乃にも気持ちは分かる。こんなに良い天気なのだ。どうしてこんな天気の良い、しかも満腹という幸せな時間に掃除をしなければならないのだろう。

「具合でも悪いの?」
「別に。眠いだけ」
「何時に寝たの?」
「2時」
「・・・平日だよね?普段も?」
「そんなもん」
「夜行性なんだ」
「せやかて眠くならんねん」

部活のない日は尚更。ふわあと猫のような大あくびをすると同時に財前は言う。語尾はあくびに掻き消えた。

「掃除とかほんまやる気あらへんわ・・・」
「三島ー、財前ー、机戻すでー。雑巾洗って来いやー」
「あ、はーい」

半目でぼやく財前をどうしようもない気持ちで紫乃がもてあましていると、対角線上に掃除当番に声を掛けられた。紫乃も大声で返事をする。

「ホラそれ、貸して」

貸してと言いつつ紫乃は財前の左手から無理に雑巾を奪い取った。こういう無気力状態の財前は放置するに限るのだ。
バケツの淵に自分と財前の持っていた雑巾を引っ掛けて、持ち上げる。水道に持って行こうとすると、紫乃の目の前に無表情のままずい、と手を出した。

「・・・何?」
「バケツ」

少し剣呑な声になってしまう紫乃の言葉以上に、かったるそうな、つっけんどんな口調で言い返されて、紫乃は言葉に詰まる。

「貸せや」
「あ、どうも・・・」
「何やねんその顔は。変な顔」
「失礼な。だって財前がそんなことすると思わなかったんや」
「俺を何やと思ってんねん」
「冷血人間」
「アホか。俺かてとりあえず血は流れてるわ」
「冷たいけどね」
「まあな」

ニヤリとも笑わずにぷいと顔を背けて廊下を歩いてゆく。財前の後を追って手ぶらの紫乃が歩いていると、水道の上の明り取りの窓から初夏の土臭い風が真緑の木の葉を揺らしているのが見えた。
バケツの汚れた水を水道に流しながら、財前が溜息をつくように言葉を漏らす。

「ホンマにええ天気やな。眠くなってきたわ」
「本当に眠いんだね」
「ああ。俺、次サボるわ。古典やし」
「屋上?」
「ああ」
「じゃあ私も行く」
「勝手にしいや」
「じゃあ決まり。私の勝手やもんな」

水道でお互い雑巾を絞りながら、共犯者めいた笑顔でニヤリと笑い合った。
15days | 23:51 | comments(0) | - | chica