2009.01.21 Wednesday
地味に
「謙也ぁ」
「何?」
謙也がベッドにうずめた頭を面倒くさそうにもたげた。
日曜日の静かな午後。休日のせいで通りからは車の音もしなければ、時折子供の笑い声が通り過ぎるだけだ。部屋はファンヒーターの音と2人の呼吸音だけが籠ったように響いている。
幼馴染のご両親は今日も診療に出ていて、弟くんはこの寒い中遊びに出たようだ。家の中には惰性で雑誌を繰っている私と謙也しかいない。
静かだ。部屋の中は優しい沈黙で満ちている。今更無理して話すことなんてなくて、寧ろそれが心地良い。
「暇」
「休みやから当然やろ」
「うう、どこか出かけようとかないの?」
「出かけるんやったら帰りにアイス買ってきて」
「そう言う出かけるじゃなくて。侑士に会いたいなー東京行きたい」
「はぁー?今から?それは無理やろ」
「無理って言わなくても分かってるって。じゃあ電話してみようかな。出るかな」
無断でベッドサイドに転がっていた謙也の携帯を取り上げる。開く前に持主の手の中に戻されてしまった。
「あかん」
「え?何でそんな嫌がるん?」
「別に嫌がっては・・・いや、でもあかん」
「何で」
「何でも」
訝しんで見上げてみても、謙也はきまり悪そうに眼を逸らす。そのまま寝返りをうつようにして背を向けてしまった。
だって今日は私の誕生日だ。誕生日くらい色んな人から祝福の言葉を貰ってもいい気がするのに。
「・・・謙也?」
「俺がおんのに、お前は侑士の方がええの?」
「・・・いや、ちょっと待って、いきなりどうしたの?」
「あんま嫉妬させんなや・・・」
「いやいや待って待って嫉妬?なに嫉妬って」
「嫉妬は嫉妬や。大体俺が一番お前の近くにいるっちゅーのに、何でお前は俺といる時はいっつも他の男の話しかせえへんの?」
「そうだっけ・・・?」
「せや。白石とか千歳とか、今だって侑士って」
「それは謙也だって同じやんか」
「・・・でも女が言うんはやっぱ違うやんか」
「大丈夫だって。私の一番は謙也だから」
「ほんまに?」
「うん」
「じゃあもう、俺の見てるとこで白石とか侑士とかあんま言わんといて」
「え・・・あ・・・うん?」
なんとなく自分でもとんでもない事を言ってしまった気がするが、謙也の様子に釈然としないまま、再び雑誌に眼を落とす。
暫くしないうちに、ローテーブルの上に放置していた自分の携帯が震えた。
『誕生日おめでとう。好きや』
かあっと自分の顔が紅潮するのがわかった。とっさに彼の背中を見ると、わずかに見える耳たぶも赤く染まっている。
何から何まで順番が違うのに、どうしてこの人はこんなに愛おしいんだろう。
背を向けたままの謙也の背中を、思いっきりどついてやった。
「何?」
謙也がベッドにうずめた頭を面倒くさそうにもたげた。
日曜日の静かな午後。休日のせいで通りからは車の音もしなければ、時折子供の笑い声が通り過ぎるだけだ。部屋はファンヒーターの音と2人の呼吸音だけが籠ったように響いている。
幼馴染のご両親は今日も診療に出ていて、弟くんはこの寒い中遊びに出たようだ。家の中には惰性で雑誌を繰っている私と謙也しかいない。
静かだ。部屋の中は優しい沈黙で満ちている。今更無理して話すことなんてなくて、寧ろそれが心地良い。
「暇」
「休みやから当然やろ」
「うう、どこか出かけようとかないの?」
「出かけるんやったら帰りにアイス買ってきて」
「そう言う出かけるじゃなくて。侑士に会いたいなー東京行きたい」
「はぁー?今から?それは無理やろ」
「無理って言わなくても分かってるって。じゃあ電話してみようかな。出るかな」
無断でベッドサイドに転がっていた謙也の携帯を取り上げる。開く前に持主の手の中に戻されてしまった。
「あかん」
「え?何でそんな嫌がるん?」
「別に嫌がっては・・・いや、でもあかん」
「何で」
「何でも」
訝しんで見上げてみても、謙也はきまり悪そうに眼を逸らす。そのまま寝返りをうつようにして背を向けてしまった。
だって今日は私の誕生日だ。誕生日くらい色んな人から祝福の言葉を貰ってもいい気がするのに。
「・・・謙也?」
「俺がおんのに、お前は侑士の方がええの?」
「・・・いや、ちょっと待って、いきなりどうしたの?」
「あんま嫉妬させんなや・・・」
「いやいや待って待って嫉妬?なに嫉妬って」
「嫉妬は嫉妬や。大体俺が一番お前の近くにいるっちゅーのに、何でお前は俺といる時はいっつも他の男の話しかせえへんの?」
「そうだっけ・・・?」
「せや。白石とか千歳とか、今だって侑士って」
「それは謙也だって同じやんか」
「・・・でも女が言うんはやっぱ違うやんか」
「大丈夫だって。私の一番は謙也だから」
「ほんまに?」
「うん」
「じゃあもう、俺の見てるとこで白石とか侑士とかあんま言わんといて」
「え・・・あ・・・うん?」
なんとなく自分でもとんでもない事を言ってしまった気がするが、謙也の様子に釈然としないまま、再び雑誌に眼を落とす。
暫くしないうちに、ローテーブルの上に放置していた自分の携帯が震えた。
『誕生日おめでとう。好きや』
かあっと自分の顔が紅潮するのがわかった。とっさに彼の背中を見ると、わずかに見える耳たぶも赤く染まっている。
何から何まで順番が違うのに、どうしてこの人はこんなに愛おしいんだろう。
背を向けたままの謙也の背中を、思いっきりどついてやった。