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ドンドンドドドンどんどん行くばい!
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12th day
すべての音が篭って聞こえるような霧雨の午後。教室の電灯が漏れ出て、廊下のほの暗い世界を優しく灯している。
そんな時間の流れさえ遅く思われるほどゆるやかな昼休みを、突然怒号がつんざいた。

「何言ってんねん三島!小春は俺の嫁やで!」
「はあ!?ユウジこそ何言っとんねん日本じゃ同性婚は認められてへんわアホ!小春ちゃんと結婚するのはこの私や!」

廊下にいた生徒の肩すら震わせる大声に、教室にいた8組の面々も驚いて視線をユウジと紫乃に向ける。けれどすぐに「また始まった」という顔をして各々の作業に戻った。
8組に所属する生徒が日に一度は必ず聞くのは、決まってこの騒ぎだった。同じく8組のクラスメイトである金色小春に関する「どちらがより小春が好きか」合戦。
今年の4月に中学校生活最後のクラス替えがあってからというもの、一氏ユウジと三島紫乃が同じクラスになってからと言うもの、この口論は8組でほぼ毎日繰り広げられている。

片や小春といつも一緒にいて常にラブコールを送り続ける男の子。
片や小春親衛隊隊長を名乗って憚らない女の子。

クラス数が多いのが幸いして2年まで接触の殆どなかった二人が、遂に3年の今年同じクラスになってしまった。しかも、小春までもが。
そうなれば小春を間に挟んで衝突するのは必然で、毎日顔を付き合わせればユウジと紫乃は必ずそんな喧嘩を始めていた。
そんな二人の衝突を最初ははらはらしながらも拳を突き上げていた8組の面子も、雨の季節になれば見慣れた光景として落ち着いたらしく最近では真面目一辺倒の委員長すら仲裁に入ってこない。

「三島が知るずっと前から小春は俺のモンなんやで!?今更横恋慕して来んなや!」
「はあー!何よそれ、私だってユウジが小春ちゃんを知る前から知ってるんだからね!」
「は!?いつからや、言ってみい!」
「1年の秋ですぅー」
「残念やったな!俺は1年の夏や、夏!」
「変わらないじゃない3ヶ月しか!」
「短い中学校生活のたった3ヶ月間がどれだけ貴重な時間か分かってるんか!?」
「ユウジからそんな大層なお言葉がいただけるなんて思っとらんかったわ。ホンマ有難いわー」
「つくづくむかつく奴やなあ・・・!せやったらこれならどや!見よこの可愛い可愛い小春の写真の数々を!」

得意げに小春のテニス写真をばっと机に並べる。すかさず写真に食いついた紫乃を見て、ユウジは自慢げに手作りの小春の写真の入ったうちわで自分を仰いだ。

「なっ・・・!何よこれ・・・ちょっと欲しいじゃない・・・!いくら!」
「売ることは出来ませーん。プライスレスや」
「うわぁむかつく・・・!ああでも小春ちゃん本当に可愛い・・・!」
「せやろー?さすがは俺の小春やで!」
「うるっさいわ、ユウジになんか聞いてない!って言うかユウジの小春ちゃんじゃないから!私のだから!」
「何やと!?やるんか!」
「ユウジがやれるもんならね!」
「ほらほらユウくん、紫乃ちゃん」
「「何!?」」
「そろそろ黙りましょか」
「「・・・ごめんなさい」」

小春の一言でユウジと紫乃は急にしおらしくなって小春に頭を下げた。小春の机の前に二人、まるで職員室で叱られる生徒のように並んで肩を丸める。

「騒ぐと回りに迷惑掛かるんは分かるよな?」
「・・・はい」
「あんまり騒ぎすぎるとワイも困っちゃうの分かるな?」
「・・・はい」
「分かったら撤収!」
「「・・・はーい・・・」」

二人は背を丸めてすごすごと大人しく引き下がると、机に散乱する写真の後片づけをし始めた。それでも写真を仕舞おうとするユウジを紫乃が引き止めては写真を取り合う。

「でもやっぱこれ頂戴!」
「あかん言うとるやろアホ!」
「いいじゃん一枚くらい!」
「あーかーんー」
「ケチー!」
「・・・何だかんだってあの二人、仲良えんよなあ」

小春が頬杖を付いて二人の姿を眺めながらぽつりと呟いた。
そうか?というクラスメイト達の疑問の視線を浴びながら、小春はニヤニヤ笑う。
今日も8組の平穏は金色小春の掌の上にある。
15days | 21:24 | comments(0) | - | chica
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