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ドンドンドドドンどんどん行くばい!
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15th day
梅雨の中日だ。初夏らしい気候に早くも辟易しながらも、時折窓から吹く風が心地いい。
5時間目の体育が祟って、4組を怠惰な眠気が襲っていた。
紫乃の席からもぽつりぽつりとクラスメイト達が沈没してゆく様が見える。
体育の次の6時間目は地理の授業で、目の前の黒板には大判の世界地図が張られている。
つとめて起きようと努力していた紫乃もやがてうつらうつらと夢路へ船を漕ぎかけた時、待ちくたびれた6限終了を告げる鐘が鳴った。

「よっしゃーーーーーーっ!テニスやーーーーーーっ!!!」

紫乃の目の前の席でガタンと盛大な音を立てて椅子がひっくり返った。大分慣れた光景ではあるけれど、未だに紫乃は驚いて肩を跳ね上げてしまう。
立ち上がった勢いで椅子をひっくり返した本人の遠山金太郎は、つい5秒前までさっきまでその筋肉質の腕を組んでうつ伏せになって眠りこけていたはずなのに、寝起きでよくこれほど大きな声が出せるものだ。
金太郎は座っていた椅子を跳ね飛ばし、おもむろに鞄とテニスバッグを掴んで、今にもコートへ駆け出さんばかりの勢いで先生に詰め寄る。

「ちょお待ちいや遠山!まだ先生の話終わってへんで!」
「ええーっ!まだやっとったん?センセー話長いわあ。ワイ、早うコート行きたいー!」
「あかん!頼むからたまには先生の言うことも聞きや!」
「嫌や!行きたい!」
「授業終わるまではあかんわ!ついでに終礼も終わってからや!」
「嫌やー!もうチャイム鳴ったやんか!仕舞いや仕舞い!」

ギャアギャアと教壇と座席で言い合いを始める。クラスメイトはいつものことと、各々勉強道具を仕舞いだして帰り支度を始めだした。
地理の先生がすごすごと教室から退散した後で、金太郎はもう、自前のテニスバッグからラケットとボールを取り出して楽しそうにしている。
今ここでテニスを始められても、困るのだけれど。
紫乃が困惑気味に金太郎に視線を注いでいると、ばちっと視線がかち合ってしまった。思わず怯んでしまう。目の前の金太郎の瞳は大きくて、引き込まれそうなほど強い光を宿している。

「何や?」
「う、ううん!何でも・・・!」
「何や?ラケット気になるん?もしかして、三島もテニスするん?」
「いや、違・・・!」
「せやったらワイと勝負してみいひん!?」
「い、いい・・・!」

金太郎はぴょんと空いた椅子に飛び乗り、手にしたラケットとボールを紫乃に向かって構えてみせる。
たとえ勝負したとしても、遠山くんはとてもテニスが強いと聞いたことがあるから、確実に紫乃が負けるに決まっている。
一生懸命断りの言葉を探していると、不意に教室の後ろドアから金太郎に声が掛かった。

「「金太郎さーん!」」
「あー!小春とユウジや!どないしたん!」
「嫌やなあ、迎えに来たんやで?」
「せや、部活行くやろ!」
「おお!」

金太郎と紫乃が振り返ると、3年生の先輩だ。確か、金色先輩と一氏先輩と言う、面白いと評判の二人組の有名人。
その後ろにいるのは、白石先輩だろう。左腕一本で、先生でも太刀打ちできない紫乃の級友を黙らせることの出来る唯一の人だと聞いたことがある。

「金ちゃん、また何かやらかしてないやろな?」
「何や白石、ワイ何もやってへんで!」
「あーそうかそうか。せやけどさっき、金太郎が椅子に乗ってるのが見えたんやけどな?俺の錯覚やったかな?」
「やややってへん!やってへんけどもうやらんから堪忍してえな!」
「さよか?せやったら今日はオマケしとこかな」
「やった!」
「おーい白石!金太郎!行くでー!」
「おー」
「ほな三島!また明日な!」
「うん、ばいばい」

大きく手を振る金太郎に紫乃も小さく手を振って返す。
ぴょんぴょんと跳ねるようにしながら大きい先輩達の後を着いてゆく金太郎の後姿を見送りながら、紫乃は「また明日」と小さく呟いた。
15days | 23:55 | comments(0) | - | chica
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