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ドンドンドドドンどんどん行くばい!
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もし神様が

「もし神様がいるとしたら?」

そうだねえ。ご隠居のお爺さんのような口調で呟くと、幸村は天を仰いだ。
口調と裏腹に、仰いだ彼の瞳は憎い敵を睨みつけているように厳しい。
7月の晴天。幸村くんの白いシャツがゆるい風にはためいて、眩しく光を反射している。
どうしてこんな話になったのか分からない。土曜日の終業後の午後、掃除の最中。いい天気だと思ったら、ふと彼が「まるで神様でも降りてきそうな日だね」と言ったのだ。

「俺は父を憎むよ」

暫く天を仰いだままで、やがて見上げる首を元に戻すと、神の子と呼ばれる彼はそう言って粛然と微笑んだ。
まるで礼拝堂が似合うような、純白の微笑み。
その微笑みに相応しく、まるで天使のように美しい容貌を持ち得た彼は、けれど天使と呼ぶにはあまりにも神々しくて、だからやっぱり、彼は神様の子供なのかもしれない。
武骨とはかけ離れた白い腕はスポーツをやっているなどとは夢にも考えられない。それをも神に愛された子供だからなのだろうか。

その神の子供は、平然と父を憎むと言い放った。訣別でも何でもない、至って普通に両親に対する感情を表すように。

「憎む?」
「そう。玉座に土足で上がって胸倉掴んで、「何でこんなことするんだ」って怒鳴ってやりたい感じ」

「実の父にもそんなことはしないけどね」と軽く笑う。ゆるいウェーブの掛かった前髪が束になって風に揺れた。
青味がかった黒の髪は日の光に濡れて光っているようだ。白い肌に黒い髪。その姿が立ち上る陽炎に揺らめく。
絵美は自分の頬を伝う汗で気が付いた。今日は、暑い。

「現実は誰にだって不都合な事実ばかりだ」
「幸村くんにさえ?」
「俺にさえ。と、いうか、俺だからこそなのかもしれないけど。神はいつだって俺に意地悪だよ」


だからこそ、いつかは。


「はっ倒してその横っ面ひっぱたいてやる。…なーんてね」

茶化した口調で括ると、幸村くんは「戻ろうか」と踵を返した。追いかけたいのに、絵美は一歩も動けない。
神様は見ているのだ。
彼のいた場所だけがぽっかりと白く浮かび上がるように日に照らされている。
小ネタ | 16:15 | comments(0) | - | chica
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