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ドンドンドドドンどんどん行くばい!
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好きって言わせてよ
「瀬戸さん」
「うん?」
「好きやで」
「うう…」

白石の言葉に、聡子は恥ずかしさから机に突っ伏した。3限と4限の中休み。目の前に座る彼に告白され、付き合って早半年。事あるごとに「好き」と言ってくれる事は勿論嬉しいのだが、恥ずかしすぎる。
今だって本当に何でもないように、そう、聡子の前の席の椅子に後ろ向きに座って、「せや、今日のお昼は学食で」などと言う他愛ない会話の流れから、突然そういうことを言い出すのだ。本当に唐突で心の準備も出来なくて、毎回動揺してしまって心臓に悪い。

「あの、白石くん」
「ん?」
「自分で言うのも難だけど」

綺麗な顔がこちらをじっと見つめて来る。この人が生まれてくる時に、きっと美の女神が祝福を与えたのだろうなあ。本当に綺麗な人だ。眩しい。眩しいです王子様。
白石とまともに見つめあえず、聡子はすっと目線を下に逸らす。少しだけ躊躇してから、口を開いた。

「その、私と付き合ってて不安にならない?」
「不安?」
「その、白石くんはいっつも言ってくれるのに、私は…気持ち、ちゃんと伝えられてないし…」
「ああ、そんなこと」

白石がへらっと笑う。余裕の笑みだ。この人がこういう笑い方をしないのは、テニスをしている時くらいのものだ。テニスをしている時の彼は、もっと挑戦的で挑発的で恍惚とした、それはもう艶然とした笑みを浮かべている。いや、今はそんな話をしているのではない。
聡子がちらりと顔を上げると、白石は穏やかな微笑みを浮かべていた。色素の薄い髪、左腕の包帯、白いシャツ。それらが陽に透かされて白いレイヤーが掛かったように輝いて見えた。少しだけ間をおいて、白石がおもむろに口を開く。

「瀬戸さん、自分が思っとる以上に顔に出るし、俺は全然不安に思ったことなんてあらへんよ」
「え?」
「せやなあ…例えば遠くの俺を見つけた時の顔とか、普段の何でもない視線とか仕草とか?その全部が、俺の事好きって言ってくれるから」
「えええええそんな風に見てたの!?」
「うん」
「うおおおおお恥ずかしい…」
「何やねんその叫び、男らしいなあ」

顔を覆って机の上を転がるように悶絶する聡子の頭上から、白石の軽やかな笑いが降って来る。

「違う?」
「…違わない…」
「せやから俺の方が、伝えな不安になってまうんや」
「そんなこと!…ないよ!」

聡子がばっと顔を上げると、白石とばっちり目が合った。今度は逸らさないで、何とか言葉を絞り出す。飲み込もうとした唾が変な所に入りそうなほど緊張している。何でもない休み時間なのに、何てことない会話なのに、どうしてこんなに緊張してしまうのだろう。

「…私も白石くんのこと、ちゃんと好きなの」

「だから、たまには私にも好きって言わせてね」

言い切った瞬間に机に突っ伏す。頬が火照ったように熱い。恥ずかしい。自分がどんな顔をしているかなんて分からない。けれど、とにかく言った、言い切った、と思った瞬間に不意に視界が薄暗い白に染まった。上から覆いかぶさるように抱きしめられたと気付いて数秒、「俺、今めっちゃ幸せかも」とこの上なく優しい声音が一番近い所から響いて来た。
小ネタ | 23:25 | comments(0) | - | chica
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